一から学べる!バリアフリーについて知っておきたいこと|水井装備

一から学べる!バリアフリーについて知っておきたいこと

バリアフリーの重要性は認識していても、その本来の意味までは知られていないのが日本のバリアフリーの現状です。そんなバリアフリーの基礎知識や身の回りのバリアフリーのご紹介、現状と課題等をまとめています。

バリアフリーの基礎知識

バリアフリーとは、障がいのある方や高齢者が社会生活を快適に過ごす上での障壁を取り除くという概念として用いられています。

バリアフリーには設備と人の意識の2面があり、そのどちらかが欠けていると成立しているとは言えません。

例えば、階段の横に設置されているスロープや駅などで必ずと言って良いほど見かける多機能トイレ等は、バリアフリーの設備です。

人の意識の面でのバリアフリーとは、助けが必要な時に一声かけられるか等が該当します。

この点において日本はまだまだ発展途上で、障がい者や高齢者に対しての偏見や無関心等をなくすことを「心のバリアフリー」と呼び、改善を呼びかけています。心のバリアフリーは行動を伴うものである事が望ましく、優先席を譲るなど実際の行動が意識の面の発展につながるでしょう。

バリアフリーの意義

日本では少子化と平均寿命が伸びたことにより、65歳以上の割合が年々増加しています。65歳以上が人口の21%以上になると超高齢者社会と呼ばれますが、日本は2019年9月時点で28,4%となり過去最高を記録しました。

また、何らかの障がいがある方の割合は人口の約8%ほどおり、こちらも年々増加傾向です。複数の障がいを併せ持つ方もいるので、単純な合計にはなりませんが、人口の8%を人数にすると1000万人近くに相当します。人数は一つの指標にしかなりませんが、これだけの人が社会生活を送りづらい世の中にならない為にもバリアフリーの考えは大切です。

Population ratio by age
65歳以上の割合が28.4%は過去最高記録です。

ユニバーサルデザイン

ユニバーサルデザインとは、建設前からあらゆる人が使いやすいように計画してデザインする概念のことを言います。日本ではバリアフリーと混同されがちですが、大きく分けると二つの点で両者の違いがわかるでしょう。

一つ目は、社会の中に元々あったバリアを改善するバリアフリーに対し、ユニバーサルデザインは新たなバリアを創らないという点です。ユニバーサルデザインを用いた建物は、建設段階からあらゆる人が使いやすいようにデザインされています。

次に障がい者や高齢者を対象としたバリアフリーに対し、ユニバーサルデザインは全ての人を対象としている点です。

1985年にアメリカのロナルド・メイスが提唱したとされるユニバーサルデザインは、バリアフリーが「障がい者のための特別扱い」という心理的障壁になることを懸念して、健常者も含めた全ての人が使いやすいことをコンセプトにして注目を集めました。

日本でもユニバーサルデザインが広まってきていますが、全ての人が使いやすいというのは現実的に実現不可能なものもあり、いわば幻想を追い求めているという否定的な意見も少なからずあります。

Universal design
あらゆる人が快適に暮らせるように考えられています。

身近なバリアフリー

街中のバリアフリー

信号

信号を渡るときによく耳にする「ピヨピヨ」などの音は、目の不自由な方のために2方向から出ており、音の違いで進む方向を判断することできます。

バス

車椅子の方のために段差のないノンステップバス年々増加し、バスの車内も手すりや段差があるところが目立つように床がグレー系、手すりをオレンジ系などに色分けするなど、安全への配慮がみられます。

点字ブロック

目の不自由な方のサポートをするために地面に設置された黄色い凸凹が点字ブロックです。正式名称は「視覚障がい者誘導ブロック」と言って、日本で発祥し世界に普及しています。

ブロックには2種類あり、線状のブロックは進行方向、点状のブロックは停止を示し、目の不自由な方が安全に移動できるように主に横断方向や駅のホームなど危険箇所にあります。

駅のバリアフリー

スロープ

駅の中の移動は階段など段差が多く、小さい段差の解消方法がスロープの設置です。国の方針で2020年までに平均利用者数が3000人を超える駅は、全てバリアフリー化することが目標となっており、段差の解消は目標達成が可能と言われています。

エレベーター

仕様にもよりますが、エレベーターには多様なバリアフリーがあります。例えばボタンには、車椅子の方が押しやすい高さで、目の不自由な方でもわかるように点字が付いています。

室内の大きな鏡は、車椅子の方が後ろ向きのまま出るためのサポートの役割を果たしており、身だしなみチェックのためではありません。最近では鏡ではなく、入り口と出口を別につけることで進行方向を変えずに出ることができる仕様も増えてきています。

多機能トイレ

よく車椅子用トイレとも呼ばれていますが、正式名称は多機能トイレです。多機能トイレには車椅子の方の他に、オストメイト(人工肛門・人口膀胱保有者)やオムツ替えの乳幼児のためなどの機能がついており、誰でも使いやすいトイレ、つまりユニバーサルデザインの考えに基づいています。

具体的には広いスペース、広い出入り口、手すり、呼び出しボタン、大型ベット、オストメイト対応水洗器具などが普通のトイレにはない機能です。

しかし機能が集中してしまったことにより、利用も集中してしまい数の不足を指摘する声も少なくありません。

現状の多機能トイレの基準では広いスペースが必要になることなど増設が難しいため、普通のトイレにも機能を分散させることも検討されています。

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私たちの身近にも多くのバリアフリーがあります。

住宅のバリアフリー

「あらゆる人」ではなく「そこに住む人」にウェイトを置いた考え方ができるのが特徴です。終の住処として高齢になった時のことを見越して設計する方も多くいます。

浴室

滑りやすく転倒の恐れがあるので手すりの取り付けや出入り口の段差をなくし、車椅子が直接入れるように出入り口の間口を広くすることなどが一般的です。

浴室では転倒以外にも、家の中の温度差によって引き起こされるヒートショックによる事故も多く報告されています。高齢者の事故が多く、発生件数は交通事故より多いというデータもあり、特に暖かい部屋から寒い浴室へ移動した時などは注意が必要です。

高気密・高断熱住宅にすることにより温度差を最小限に抑えることができるので、費用はかかりますが予防策としておすすめです。

heat shock
ヒートショックによる死亡事故件数は、交通事故の4倍以上あります。

トイレ

移動が大変な高齢者の方などは、寝室近くにトイレを設置し、手すりをつけることで立つ・座るといった動きにも補助を入れると良いでしょう。トイレを2ドアにして、寝室・浴室と繋がっている形にする事で、移動を最小限に抑えることも介護生活になった時のことを考えると良いかもしれません。

キッチン

バリアフリーキッチンと呼ばれるものの多くが取り入れていると言われているのが、座った人目線の設計です。

例えば、低く作られた調理台や座ったまま作業ができるようにシンクの下に足が入れられるスペースを設けるなど、立ち仕事が辛い人でも極力人の手を借りずに作業ができるようになっています。

バリアフリーの現状と課題

日本は世界的に見てもバリアフリーが進んでいる国と言うことができるほど、充実した設備を備えています。それに加え2020年オリンピック・パラリンピックに向けて、公共交通機関のバリアフリー化なども進行中です。

改正バリアフリー法では、充実してきた設備面と国民の心のバリアフリーが連携した共生社会の実現が明確化し、意識の面でのバリアフリーの重要性がより一層謳われています。この点において、日本はまだまだ改善の余地があり、日常生活にバリアを感じている人が多くいることも事実です。

設備の面での課題

この問題の解決には多額のコストが必要となるため、全てをすぐにと言うわけにはいかないでしょう。

多額のコストを賄う方法として、「利用者負担」や「国の負担」など様々な意見がある中、解決を探っています。

・ホームと車両の間の段差と隙間

現状はほとんどの場合、駅員にスロープを設置してもらって乗り降りをしています。車椅子の方が電車に乗るときは、スロープ設置のため事前に降車駅を駅員に伝えなければいけません。

時には思いつきで下車してみたいという思いを持っている人もおり、解消法としてホームに可動ステップが付いている路線も、数は少ないですが存在します。

・駅のホームドアの設置

都内では、近年見かけることが多くなってきたホームへの転落防止用ホームドア。視覚障がい者の方の多くがホーム転落を経験していると言うデータもあり重要度は高いですが、日本全体の設置数は多くありません。

意識の面での課題

海外から見た日本のバリアフリーの課題として、意識の面を挙げられることが多くあります。

席を譲った方が良い時や重そうな荷物を持ってあげる等、気づいてはいるけど言い出せない場合や、そもそもバスや電車の優先席や車椅子用スペースを、健常者の方が譲らない等の事態が起きてしまうと、バリアフリーとは言えません。

前述してきた心のバリアフリー実現のためにも、国民の意識としてもう一歩手を差し伸べる勇気と差し伸べやすい環境作りが急務と言えるでしょう。

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一人一人がもう一歩手を差し伸べる勇気を持ちましょう。

これからのバリアフリー

日本全体に言葉としての認知は広まっているバリアフリーですが、その取り組みを詳しく理解している人は限られており、これからはバリアフリーについて知る機会を増やす取り組みが必要になってきています。

その取り組みの一つとして注目されているのが、車椅子用アプリの「WheeLog」

アプリを通してユーザーが知っている情報を共有可能で、「車椅子でもこのルートなら行ける」「ここに多機能トイレがある」など写真付きで共有することができます。

情報を知ることで車椅子の方が街に出かけやすくなり、街で車椅子の方を見かけることが多くなると「心のバリアフリー」の発展にも繋がっていくでしょう。

また、驚くべきことにWheeLogのユーザーは半数近くが歩ける人です。車椅子の方に情報を共有することで、すでにアプリを通して間接的に心のバリアフリーが広まっています。

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WheeLogのユーザーの多くは歩ける人です。

まとめ

建設当時はバリアフリーの観点があまり含まれていなかった街中や駅の構内も、着実にバリアフリー化が進められてきています。さらにこれから建設する建物等は、誰もが使いやすいように考えられたユニバーサルデザインの考えのもと創られるでしょう。

これからは高齢者、障がい者、健常者と属性で判断するのではなく、誰しも助けが必要で、そのポイントは人それぞれであるという事を忘れてはいけません。健常者が一方的に助けるという考えではなく、全ての人が快適に過ごせるように考えるユニバーサルデザインの考えが、これからのバリアフリーにとって重要な役割を果たしていくことになることが予想されます。

バリアフリーについて知りたい方のために、バリアフリーの意味など基礎知識を詳しくまとめました。街中や駅、住宅のバリアフリーも画像付きで解説しています。日本のバリアフリーの現状と課題についても含め、バリアフリーの情報を網羅しています。

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