自宅のトイレを改修!バリアフリートイレ
目次
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
ユニバーサルデザインとバリアフリーという言葉を、混同してしまうということをよく耳にします。
ちなみに今ではバリアフリーという言葉を知っている人は95%以上、ユニバーサルデザインという言葉を知っている人は約60%弱という認知度になっているとの事です。
2007年では、バリアフリーが93%程度、ユニバーサルデザインが30%程度だったので、ここ数年でユニバーサルデザインという言葉の認知度はかなり上がってきていることになります。
ユニバーサルデザインとは簡単に言うと、どの国籍、どの年代、どの性別、障害の有無にかかわらずだれでも平等に使えることを目指したデザインの事です。
実際には、公共の施設、街、空港や交通機関、公園などに設置されているものもあり、皆さんも気が付かないうちにユニバーサルデザインに触れていることと思います。
これを機に街に出た時にユニバーサルデザインのものを探すのを楽しむのも良いかもしれません。
バリアフリー(バリアを取り除く)は、どちらかというと、バリア(不便さ)を感じている、ご高齢者や身体的に障害のある方にとって配慮するようなデザインを指すことが一般的です。
ですから、バリアフリーデザインとは、その方々、それぞれのバリア(不便さ)を取り除くような個人個人、千差万別のデザイン、手法になってきます。
ユニバーサルデザインは誰にでも優しいデザインなので、そのデザインは、もしかすると「その人」には合わない可能性があるのに対し、バリアフリーデザインは、「その人」のバリアを取り除くものでなくてはならないので「その人」に合わせたデザインになるということになりますでしょうか。
ユニバーサルデザインのトイレ
実は多くの方がユニバーサルデザインのトイレを利用されたことがあるのではないかと思います。
ユニバーサルデザインのトイレとは、だれでも使える使いやすいトイレで、公園や大きなショッピングモール、簡易的なものはコンビニでも見かけるようになりました。俗にいう「だれでもトイレ」です。
性別等関係なく、車いす利用者もスムーズに使えるように考えられており、オストメイト対応の汚物流しを設置してあったり、オムツ替え台、ベビーシート、手すり、いろいろな設備が一つのトイレに網羅されています。
一見良いことばかりのように感じるユニバーサルデザインのトイレですが、課題もあることを忘れてはいけません。
誰でも気兼ねなく使用できるメリットがありますが、いろいろな物を詰め込む分、それなりの広さが必要になることが、設置数を増やして行く上で課題と言えるでしょう。
このデザインは、不特定多数の方が利用する公共施設にはとても便利なトイレになりますが、一個人の事をフォーカスして考えた場合には、向かない場合もあるかもしれません。
バリアフリーのトイレ
逆にバリアフリーのトイレを定義するとしたら、「その人個人」の身体に合わせたトイレづくりということになるのではないでしょうか。
つまり「その人個人」が多くの時間を過ごす住居でバリアを取り除いたトイレです。
すなわち、手すりの高さ、手すりの位置(右側・左側・両側)、床の段差、床の材料、ペーパーホルダーの位置(高さ)、照明の明るさ、手洗いの位置、出入口の方向、種類など「その人個人」の使いやすさを追求したデザインになります。
バリアフリーのトイレで必要なこと
ここで大事なのは、人間にとって排泄という行為は、人間の尊厳にかかわる大事な行為ということです。
この行為が、自立してできるかできないかによって、その人が生きていくうえでの自信に繋がったり、虚弱に繋がるなど、ご家族にとっても同居の大事なポイントになってくる事柄と言えるでしょう。
バリアフリー化をするためには
「その人個人にあわせたバリアフリー化」をするためには、本人の協力が不可欠であり、最初の計画の段階でご本人にも同席してもらったり、ご家族、関係者の方々にもお話を十分に聞くことをオススメします。
ご本人は、大勢での打ち合わせの時は、申し訳ないという遠慮の気持ちもあり意外と本音で話さないことも少なくありません。
そのような時は、個別で意見をいただき、本人の意思を尊重して計画するようにした方が、のちにトイレを利用する際も、ご自分の意見でのバリアフリー化なので気持ちよく利用できますし、多少負荷がかかっても意識が上向きに働き、良い結果につながるのではないでしょうか。
具体的には、一般的に言うバリアフリー化として、床の段差解消、扉の改修などハード面の最低限のことは、ご本人の意思に関わらず行った方がベターです。
手すりの細かな位置、方向、縦横、ペーパーホルダーやリモコンの位置などは、状況を考慮して本人に確認の上設置すると良いかもしれません。
あくまでもケースバイケースになっていきますが、その目的は「人間の尊厳にかかわる大事な行為」を守るということですので、一言でバリアフリー化といってもいろいろなケースが存在するということを覚えておいてください。
トイレの位置
トイレの位置は、昔の住宅では、北側の家の端の狭いところに追いやられていることや階段の下の狭い空間に追いやられていることが多いかと思います。もっと昔は、家の離れにトイレがあることも珍しくありませんでした。
最近では、トイレの機能や換気扇の機能が発達したこともあり、トイレの内装や位置もこれまでとは変わってきています。
水洗のトイレが普及してくる前は仕方ない面もありましたが、洗面所のお隣がトイレにできたり、洗面と一体型の広いトイレにできたり、寝室やリビングの近くにトイレを配置したりとバリエーションも豊富です。
昔の住宅にお住いの方もトイレの位置を変えることは可能ですが、配管の関係などからそれなりの工事が必要になるでしょう。
例えばお家のバリアフリー化の工事をお考えの場合などは、トイレは毎日何度も使うであろう設備なので、工事を視野に入れても良いかもしれません。
その場合には、どのようにすれば希望に沿うかよく専門家と相談の上決めることをオススメします。
新築からお考えの場合も、大事な場所ですので、利用するまでの距離、居室に居る時、寝室にいる時、夜中、昼間、利用頻度も含めて計画していきましょう。
トイレへのアプローチ・出入口
バリアフリーのトイレへのアプローチの仕方には、前方から・側方から・斜めからなど様々なパターンがあります。
住宅のトイレの場合は、ほとんどが前方からのアプローチ、または側方からのアプローチになるでしょう。
その場合は、車椅子を使用する方にとって、出入りのしやすさはどうなると思いますか?
一般的に前方アプローチの場合には開き扉が多く、奥に開くか手前に開くかのどちらかとなりますが、車椅子に乗った状態では難しい行為となります。
ドアを開ける際に、車椅子に乗ったまま一歩二歩下がらなければならない事が予想され、廊下の幅が狭い場合など、より不便な状況となるでしょう。
一方で側方からのアプローチの際に多い引き戸は、作りにもよりますが一般的にはアプローチしやすいとされています。
これは単純に出入りの際に戸が邪魔にならないことが大きな理由ですが、扉そのものが狭かったり柱が入ってしまっているなど、有効間口寸法が狭いものもあるので注意が必要です。
そのような場合には、バリアフリー用のコンパクトにおさまる折れ扉や3枚連動で広い開口が取れる引き戸などで有効開口寸法を確保できるものをえらびましょう。
結論として、車椅子利用のことを考えるとスタンダードな引き戸、有効間口が大きくとれるバリアフリー用の引き戸、それが難しい場合にはコンパクトに収まる折り戸が良いと思います。
バリアフリー目的で改修する場合には、何も考えずに開き戸にすると言うのはあまりオススメできません。
押入れをトイレへリフォーム
「えっ!」と驚く方もいるかもしれませんが、バリアフリーリフォームで時々ある事例です。ご高齢になり介護が必要な場合や、プライベートなトイレが必要になった場合など、部屋の一部や収納の部分をリフォームしてトイレにする場合があります。
そのような場合には、
そのような場合には
- ①どこからか分岐をして水道管を配置する
- ②汚水の排水を配管する
- ③床の補強などの内装工事
配管時に床など内装を壊す必要があるので復旧する時に補強までしてもらいましょう。
水道は近くに水道管が通っていればベターですが、排水管については汚水の為ほとんどの場合、ほかの配管とは屋内で接続せず、屋外まで単独で配管する必要があります。
あとは換気の設置です。そこの部分だけクリアーできれば、設置階が1階であろうが2階であろうが、収納などをトイレにリフォームすることが可能です。
外壁に面していない箇所の場合、換気の設置が大変なこともあるので、専門の業者に相談をしてみるのが良いでしょう。
実はいろんな動作をしなければならない場所
トイレという場所は実は「いろんな行為を狭い空間で一気に行う場所」という認識は皆さんお持ちになったことはあるでしょうか?
健常者の方は意外と気が付かない部分かもしれませんが、意外と短時間でハードなことを行う場所なのです。まずトイレに向かうことから始まります。
尿意便意を感じた段階で
- ①立上り、歩き始めます。(足腰を使います、場合によっては階段を上ったり下りたりしなくてはなりません)
- ②扉を開けます(腕、手、指を使います)
- ③電気をつけます(腕、手、指を使います)
- ④身体を回転させて、着衣を下ろします。(その時どのくらいの着衣量かわかりませんが、冬場ですと2枚以上はあるのではないでしょうか?)
- ⑤腰を下ろします。(足腰を使います)
- ⑥そして、いきみます。(排泄します、この時の負荷(特に冬)は負担がかかります)
- ⑦ペーパーをとり、ぬぐいます。(シャワー便座で局部を洗います)
- ⑧立上り着衣を戻します。(かがんだ状態からを何度か繰り返すかもしれません)
- ⑨排泄物を流し、手を洗います。
- ⑩そして、居室に戻ります。
いかがでしょうか?トイレというのは、この行為を短時間で行う場所であり、さらに細分化したら10以上の行為を全身を使って一気に行っている場所と言えます。さらに、一日何回も、寒い冬の真夜中でも行わなければなりません。
健常者の方々は日常の行為で何ともないことかもしれませんが、結構ハードに感じる方も多くいらっしゃることも事実です。
以上のことを踏まえると、手すりの取り付けなどのハード面でのバリアフリーは重要と言えますが、お家の中の温度差などソフト面でのバリアフリーも視野に入れて行くべきでしょう。
お家の中で部屋ごとの温度差によって引き起こされるヒートショックは、年間死亡事故件数が交通事故よりも多いデータが出ている年もあります。
局所的なリフォームで温度差のバリアフリーを考えるには限界がありますが、大型の断熱リフォームや新築する場合には、この目に見えないソフトな部分のバリアフリーにも着目していただきたいところです。
まとめ
今回は、バリアフリーのトイレという視点で、それぞれ個人(家族)に合わせて使用するトイレとしてどう考えるべきかを解説させていただきました。
トイレは前述した通り、毎日何回も使用する場所であり、実は狭い空間でいろんな動作を行わなければならない場所なのです。
この所作ができるできないによって、人間としての基本的尊厳を守る、自立度や自信感にもつながる大事な場所とも言えるのではないでしょうか。
ただ単に「用を済ませる場所」として考えず、これから新築を考える方、これからリフォームを考える方々には、しっかりと考えていただきたい場所になります。
またバリアフリーリフォームの場合、介護保険の住宅改修助成金、市区町村の助成金などの情報も調べて上手に利用することをお勧めします。